9.4.new ground prev next
back


 ロロ「この街もそろそろ飽きたな……」

 物憂げに中空を眺め、何か悩みでもあるのかと思わせる重苦しい溜め息。どうしたのかと心配して近づいてみたら、この一言であった。

 またか、と取り巻きは見えないように頭を掻いた。

 「あれ? あのバー気に入ってませんでしたっけ」

 ロロ「ああ……昨日までは」

 取り巻きはニヤリと笑った。

 「じゃあ、他の奴らにも声かけてきますんで、次どこ行きたいか、決めといてくださいよ!」

 そう言って、取り巻きは慌てて部屋を出た。




 ロロ(そうだなー……)

 顎に手を当て、ぼんやりと中空を見つめながら考えを巡らせた。

 ふと、以前取り巻きが言っていた、ムー大陸に蔓延している魔薬"免罪符"の話を思い出した。

 ロロ(……あ、そうだった。"挨拶"してやんなきゃな〜……あ〜……免罪符……免罪……罪が許される……罪……改心……宗教……神使教……?)

 そして、静かに薄ら笑いを浮かべ、誰もいない部屋で呟いた。

 ロロ「巡礼」



 「ウーさん! 仲間も荷物もまとめましたよ! どこ行くか決めました?」

 ロロ「ああ」

 「どこです?」

 ロロ「ファンディアスのファリアス」

 「港町っすか! いいっすね!」

 ロロは立ち上がった。



 アジトの広間に出ると、取り巻きたちが荷物をまとめて集まっていた。

 そのうちの一人が大きな筆と墨汁を差し出した。

 ロロはそれを受け取ると一か所に集まる取り巻きたちの周りに模様を書き始めた。

 そうしてぐるっと一周模様を繋げ終わると、ロロ自身もその輪の中に入った。

 ロロ「身転如律令パラレルダンス

 目を瞬いた次の瞬間、眼下に港町を見下ろす岩山の上に立っていた。

 すぐ後ろの岩肌には洞穴があり、その中はこれまでいたアジトと全く同じ構造となっていた。

 取り巻きたちはワイワイと荷物を自分たちの場所に戻し始めた。


岩山からの景色

 取り巻きの一人が言った。

 「この町でひと稼ぎ、させて貰いましょうかね」


 ファンディアス国の港町ファリアス――

 パンゲア大陸、東海岸イーストエンドの交通の要所――

 数ヶ月後には、神使教徒たちがジパング国へ巡礼に訪れるための巡礼船が出る、W・B・アライアンスの目的地――





―――  黒い三日月(new ground) ―――





2009.12.5 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2012.7.25(改)