ガヤガヤと楽しそうな笑い声が響き、夜だというのに活気が溢れる、その町で人気の酒場。
その隅で、溢れる活気もヒラリと避ける、一人酒を楽しむ帽子の男――ロロ・ウー。
そこに近寄る派手な格好の女が二人。
「お兄さん、一人?」
「ああ……」
「一緒にどう?」
女の一人が持っていた酒瓶を振って見せた。
「……どうぞお好きに。二人も女神みたいな美人に囲まれたら酒も進むよ」
「まあ、女神だなんて、うれしいわ」
女たちはロロからグラスを奪うと、入っていた酒を飲み干し、持ってきた酒を注いでロロの目の前に置き、二コリと艶っぽく笑った。
「キツい女神様だな。ところであんたら、逆に"神様にはあったことあるかい"?」
女たちはケラケラと笑い、ロロの端正な顔や胸元をジロジロと見つめた。
「残念ながら……あんたは神様みたいにイイ男だけどね、どうせなら生身の人間がいいわ」
ロロはだるそうにグラスを取り、酒を一気に飲み干した。
女たちは黄色い歓声を上げた。
「わぁ! すごい! これ結構強いのよ! 私たちならその半分で夢の中だわ!」
「……夢の中……」
ロロはニヤリといつもの薄ら笑いを浮かべた。
「たしかに、"そんな薬"クセェ酒だ」
その一言を合図に女たちは一斉に立ち上がった。
「あんた、"黒い三日月"のヘッドのロロ・ウーだね!」
「……賞金稼ぎか」
「正〜解♡」
ロロの手からグラスがこぼれおち、パリンと音を立てて床で砕けた。
「意識が遠のいてきたでしょ? 即効性の睡眠薬だよ」
なおもニヤニヤしながら、やがて俯き、とうとうロロは椅子にもたれた。
「あっけないねぇ! 今頃あんたのアジトも仲間が奇襲中さ」
ロロの口から笑みが消えた。
「薬で落ちたか……」
それは突然のことだった。
二人のうち、一人が突然ひっくり返った。
「え……」
ロロは椅子から立ち上がり、残った女の顔の前に手をかざした。

ひっくり返った女は口から泡を吹き、涙を流しながら意味不明な言葉を繰り返していた。
「な……なに!?」
「おれのモンに手ェ出すなんて、バカなやつらだなぁ」
◆
ロロが去った後の店は、水を打ったように静かだった。
店主をぼやくように呟いた。
「"あの人"怒らすなんて、バカな賞金稼ぎだ。魔導師ですら、敵わねぇってのに」
ロロがいた席の傍には、女が二人、転がっていた。
「あ! ウーさん! お帰りなさい!」
「遅いッスよ、ウーさん」
「なんだ、片付けちまいやがったか」
ロロ達に取り囲まれ、十人ほどの男たちが縄でグルグル巻きにされていた。
取り巻きの一人が心配そうにロロに声をかけた。
「一応聞いときますけど、大丈夫でした?」
さもまずいものを食べたかのように、ロロは舌を突き出した。
「ああ、おれんとこは女が2人、睡眠薬入りの酒飲ませてきやがった」
周囲に笑い声が起こった。
「ハハハ、ウーさんに"薬"なんて効くはずないのに!」
「どうします? こいつら」
「全員男か……」
ロロはニヤリといつものうすら笑いを浮かべた。
「"プランター"に。どいつに一番早く"華"が咲くか、賭けだ」
「ギャハハ! いいっすね〜!」
「じゃあ、早速"プランター"に」
捕らわれた男たちはアジトの地下へと連れて行かれた。
徐に、ロロは大きなため息をついた。
「どうしました?」
「お前らケガねぇな?」
「ハハ! あんな三流相手!」
「ウーさんの"
ロロは愛おしいものを愛でるように、微笑んだ。
「頼もしい"
――― 黒い三日月(paradise) ―――
2009.11.28 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2012.7.23(改)