気持ちよさそうにリズムを刻む、豪快ないびき。
鼻ちょうちんが割れ、フィードはふと目を覚ました。
むくりと起き上がり、何気なく枕にしていたクリスに目を落とした。
フィード「……んん?」
フィードはムンズとクリスの尻尾をつかみ、目の前に持ち上げジロジロと見つめた。
なんだか……毛のボリュームがなくなっている?
そしてなるほどと手を叩いた。
フィード「首が痛ぇのはこのせいか」
なんとかしねーと俺様の安眠が、とフィードは荷物をあさった。
フィード「シャンプーすりゃあなんとかなんだろ」
フィードはシャンプーの入ったチューブを逆さにし、思い切り握りしめた。
ブシャアと音を上げ、滝のようにどろどろとしたシャンプーがクリスに振りかけられた。
クリスは「ミ゛ャーー」と不快そうな声を上げた。
次いで、フィードはボキボキと指を鳴らした。
クリス「ミ゛ャッ!? (なぜ指を鳴らす!?)」
フィード「おら、ジッとしてやがれ」

ガシガシガシガシガシガシ…
「毛よ、生えて来い!」と思い切り力を込めてクリスの背を泡立て始めた。
クリス「ミ゛ャーーー!! (痛ぇーーー!!)」
ふと、何かに気づいた様子でフィードは手を止めた。
フィード「しまった」
フィードはキョロキョロとあたりを見回した。
フィード(水がねぇ……)
しばらく泡だらけの両手を見つめた。
フィード「……まぁいっか、こうすりゃ」
クリス「ミャ? (何が?)」
フィードはクリスの尻尾を持って思い切り振りまわした。
クリス「ミ゛ャァーーーー!! (ギャーーーー!!)」
泡はすべて吹き飛んだ。
フィードは再びクリスの背中を見つめた。
フィード「……(毛のボリュームが)戻ってねぇーなぁ」
フィードは再び荷物をあさり出し、あるものを取り出した。
フィードの手の中には、のり。
クリス「ミャ!? (何に使うんだよ!!)」
次にクリスの尻尾をつかみ、グルグルとまわしてクリスの毛の生え具合を確認した。
フィード「ここがいいか」
そうしてドカリとクリスを仰向けに押し付けた。
フィード「ジッとしてろよ」
クリス「!?!?」
クリス「ミ゛ャァァァァァァァァーーーーーーー!!」
よしの「クリスちゃん!? フィード様! 何してらっしゃるのです!?」
フィード「おー! よしの。なんかこいつの背中毛がハゲてきてっから、他のとこから植毛してやろーと思ってな」
フィードの手の中には大量の黒い毛。
クリスの腹にはポカンと一部地肌が覗くスポット。
よしの「ぎゃーーーーー!!!」
その日からしばらく、フィードはよしのからクリスを貸してもらえなくなった。
フィード「……なぜだ……」
――― but, it's the mistake(閑話) ―――
※作者は動物虐待に断固反対です。
2009.10.24 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2012.6.6(改)