8.3.but, it's the mistake prev next
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 気持ちよさそうにリズムを刻む、豪快ないびき。

 鼻ちょうちんが割れ、フィードはふと目を覚ました。

 むくりと起き上がり、何気なく枕にしていたクリスに目を落とした。

 フィード「……んん?」

 フィードはムンズとクリスの尻尾をつかみ、目の前に持ち上げジロジロと見つめた。


 なんだか……毛のボリュームがなくなっている?


 そしてなるほどと手を叩いた。

 フィード「首が痛ぇのはこのせいか」

 なんとかしねーと俺様の安眠が、とフィードは荷物をあさった。




 フィード「シャンプーすりゃあなんとかなんだろ」

 フィードはシャンプーの入ったチューブを逆さにし、思い切り握りしめた。

 ブシャアと音を上げ、滝のようにどろどろとしたシャンプーがクリスに振りかけられた。

 クリスは「ミ゛ャーー」と不快そうな声を上げた。

 次いで、フィードはボキボキと指を鳴らした。

 クリス「ミ゛ャッ!? (なぜ指を鳴らす!?)」

 フィード「おら、ジッとしてやがれ」

 恐怖

 ガシガシガシガシガシガシ…

 「毛よ、生えて来い!」と思い切り力を込めてクリスの背を泡立て始めた。

 クリス「ミ゛ャーーー!! (痛ぇーーー!!)」

 ふと、何かに気づいた様子でフィードは手を止めた。

 フィード「しまった」




 フィードはキョロキョロとあたりを見回した。

 フィード(水がねぇ……)

 しばらく泡だらけの両手を見つめた。

 フィード「……まぁいっか、こうすりゃ」

 クリス「ミャ? (何が?)」

 フィードはクリスの尻尾を持って思い切り振りまわした。

 クリス「ミ゛ャァーーーー!! (ギャーーーー!!)」

 泡はすべて吹き飛んだ。

 フィードは再びクリスの背中を見つめた。

 フィード「……(毛のボリュームが)戻ってねぇーなぁ」

 フィードは再び荷物をあさり出し、あるものを取り出した。




 フィードの手の中には、のり。

 クリス「ミャ!? (何に使うんだよ!!)」

 次にクリスの尻尾をつかみ、グルグルとまわしてクリスの毛の生え具合を確認した。

 フィード「ここがいいか」

 そうしてドカリとクリスを仰向けに押し付けた。

 フィード「ジッとしてろよ」

 クリス「!?!?」




 クリス「ミ゛ャァァァァァァァァーーーーーーー!!」

 よしの「クリスちゃん!? フィード様! 何してらっしゃるのです!?」

 フィード「おー! よしの。なんかこいつの背中毛がハゲてきてっから、他のとこから植毛してやろーと思ってな」

 フィードの手の中には大量の黒い毛。

 クリスの腹にはポカンと一部地肌が覗くスポット。



 よしの「ぎゃーーーーー!!!」


 その日からしばらく、フィードはよしのからクリスを貸してもらえなくなった。

 フィード「……なぜだ……」





 ――― but, it's the mistake(閑話) ―――

 ※作者は動物虐待に断固反対です。



2009.10.24 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2012.6.6(改)