フィード「まだかな」
ヤクトミ「お前なあ、知らねぇぞ」
教室内は異様な興奮と期待感に包まれていた。
少し開いたドアの隙間から、外側のドアノブに白く大きな手がかかった。
教室が一瞬にして静まった。
もくもくと白い煙を立て、ドアを開けたこの授業の担当――ガルフィン・フォーンの頭に、黒板消しが落ちた。
「ギャハハハハハ」
教室内は一斉に爆笑の渦に包まれた。
ガルフィンは吠えた。
「首謀者はどこのどいつだ!」
ガルフィンのいつもの怒鳴り声をスタートの合図に、教室中の生徒たちは一斉に蜘蛛の子を散らすように逃走した。

指をボキボキと鳴らし、ガルフィンはニヤリと笑った。
ガルフィン「いい度胸だ。ガキどもめ」
――図書室
エオル(……騒がしいな……)
一人、授業の空き時間を利用して読書にふけっていたエオルは部屋の外の異変に気づき、図書室のドアから顔だけひょっこりと出すと、キョロキョロと外の様子をうかがった。
すると、正面の階段に、息を切らせて駆け上がって来た赤い瞳。
エオル「ねえ、一体何の騒ぎ……」
フィード「ちょうどいい! お前!」
エオル「えっ?」
フィードはエオルの手をガシリと握り、両手でしっかりと握手をした。
フィード「あとは頼んだ! 誰か知らねーけど!」
エオル「えっ? 何を?」
フィードはそのまま窓から飛び去った。
一体なんだったんだ、とエオルは窓からフィードの背中を不思議そうに見つめた。
エオル(なんなの、あの人……)
音もなく背後に忍び寄る白く大きな手。
突然、エオルは首根っこを掴まれた。
ガルフィン「お前か? 犯人は」
エオル「へっ!?」
エオルの手には、チョークの粉がべっとりと付いていた。
エオルはふと目を覚ました。
エオル(ずいぶん懐かしい夢だな……)
そもそもこんな記憶、よく残ってたな、などと思いつつ、エオルは眠り眼をこすりながら、フィードと火の番を交替しようとむくりと起き上がった。
エオルの視界には、パチパチと音をあげて燃えるたき火をぼうっと見つめる赤い瞳。
卒業して、こんなところで火を囲んでいるが、今思えば、あれが最初の出会いだったのか……
なつかしい
当時は苦い思い出も
今となっては――
――― bitter sweet(閑話) ―――
2009.9.19 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2012.1.25(改)