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パシャン……

ハンターの放った赤茶色の宝珠は、弧を描いて砂の大河へと真っ逆さまに落ちていった。

石の舟を降り、あたりをうろうろしていた真ん丸の黒猫――クリスは、赤茶色の宝珠によしのの優しい匂いを感じ、宝珠を追って、大河へと飛び込んだ。


タヌキのような尾をスクリューのようにグルグルとまわし、砂をかき分け、よしのの匂いのする方へ――

砂で視界はゼロだが、近い。

そう思った瞬間、クリスの目の前を巨大な何かがピュンと通り過ぎた。

同時に、よしのの香りも無くなってしまった。

砂の大河の中を泳ぐ巨大レモラが宝珠をエサと勘違いし、飲み込んでしまったようだ。

クリスはあわてて後を追った。


そのころ、巨大レモラは久々に食べ物を腹に入れ、満足していた。

しかし、後ろから聞きなれない音が――

危険を感じたレモラは反射的に宙へと飛び跳ねた。

同時に後ろから黒い影が同じように飛び跳ねた――猫だ!


ザザーーン!

砂の跳ねる音に、よしのは振り返った。

よしの「お魚さんがいらっしゃるのでしょうかね?」

振り返って、目に入ったエオルの顔はポカンとしていた。

よしの「どうなさいました?」

エオル「……今……クリスみたいなのが魚と一緒に跳ねてた……」

よしのは笑った。

よしの「おかしなエオル様。クリスちゃんは猫だから泳げませんわ」

エオル「そ……そうだよね……」


再び砂の中――

魚は猫の天敵。

レモラは野生のカンでクリスが自分の命を危険にさらすモノだと感じていた。

自らの全身全霊渾身の力で逃げた。

しかし、

クリス「ミ゛ャーーーー!」

クリスの強烈な頭突きをくらい、レモラは岸に打ち上げられた。

レモラは気を失った。

その口元には頭突きの衝撃で吐き出された赤茶色の宝珠。

クリスは一仕事終え、誇らしげな顔をしていた。
同時にわき起こる空腹感。

クリスはレモラを見た。



あっ……

エオルと談笑していたよしのは、再びエオルがポカンとあっけにとられた顔をしていたのに気づき、声をかけた。

よしの「いかがなされました?」

エオル「……今……クリスが巨大レモラをウロコごとバリバリ食べてた……」

よしのは笑った。

よしの「エオル様って面白い方」

エオル「いやいや! 本当だって! あそこっ! ほら早く! 見えなくなっちゃう!」

よしのは腹を抱えて笑った。

よしの「エオル様ったら」

エオル「本当だってーー!」


石の舟は滝の方角へとゆっくりと流れていった。





――― savanna (閑話) ―――





2009.6.20 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2011.10.26 改