母「お前がこれからゆく"世界"は、お前を人として見てくれることはない。そういう場所だ。だが、ゆくゆく私の跡を継ぐには、それを知らなければならない。私の息子であるなら、たとえどんな仕打ちを受けようと、負けてはならぬぞ」
ヤクトミ「はい! 母上」
「なぁ」
白いふわふわの髪の少年は、しつこく自分の周辺をキープしている隣の銀髪に問いかけた。
「あん?」
問いかけれ、銀髪は適当そうな返事をした。
10月――様々な年齢、種族の新入生たちが、ここ、
すれ違えば、必ず新入生だとわかる。なぜなら、獣人の教師がいるとまだ知らない新入生たちは、決まって白い髪の少年の尾を驚いたように見つめるからだ。
―― なぜ、ここに獣人がいるのかと ――
そして、決まってすぐ目を逸らす。
―― 関わらないようにと ――
白髪「お前、俺のこと怖かねーのかよ」
銀髪「怖ぇよ。なんでかわかんねーけど。みんなそうだから、俺様もそうだ」
白髪「……じゃあ来んなよ」
銀髪「俺様も次の講義コッチなんだよ」
キャンパスの石畳。冬の準備のために葉の色を赤や茶に染めた木々。空は青く、小鳥は歌う。
白髪「……鳥はいいな」
白髪はぽつりとつぶやいた。
銀髪「なんで?」
白髪「"鳥だ"ってみんなに思われてるから」
銀髪「……んーー」
銀髪は白髪の首根っこをふんづかみ、石畳の上をはずれ、木立の中に分け入った。
白髪「なんだよ!?」
紅葉の木々生い茂る赤や茶のトンネルを抜けると、小さな小屋がひっそりと建っていた。
銀髪「見ろ、昨日見つけた。上級生の飼育小屋だ」

中にはフサフサとした毛だるまのような小さな鳥が、わらわらと餌をほおばっていた。
銀髪「こいつも鳥だ。でも飛べねえ、食用だ」
白髪はよくわからないが胃の裏あたりがむかむかとした。
白髪「だから?」
銀髪「鳥っつっても、いろんな鳥がいるんだよ。自由に空飛んでるやつとか、食べられるだけのやつとか。それも全部"鳥"」
白髪「……だから?」
銀髪「……あれ? ちょっと違うか?」
銀髪は腕を組んで一瞬考え、再び白髪に向いた。
銀髪「なんか、最初"お前とおんなじやつ"見たとき、あえて違いを認め合わないと"本当の理解"ってできないんだってオヤジが言ってた。でもそれってすっごく難しくって、世界中や自分の中にも"テキ"がいっぱいなんだって。だから、俺様、お前と仲良くしようと思う」
白髪「意味分かんねーよ。難しくってテキがいっぱいなのに、俺と仲良くすんのか?」
銀髪は不敵な笑みを浮かべた。
銀髪「だって、そのほうが、面白いじゃん。面白いから、ここでの友達第1号はお前に決まり!」
白髪「他のやつにいじめられっぞ」
銀髪はフフフと含み笑いをした。
銀髪「テキは多けりゃ多いほど燃える!」
白髪「ばかなやつ」
白髪はうつむいた。銀髪は「そういえば」と手を叩いた。
銀髪「お前、名前なんだっけ?」
ヤクトミ「……ヤクトミ……」
フィード「俺様はシャンドラだ」
フィード「俺様の目標は
ヤクトミ「俺と同じじゃねーかっ! マネすんなよ」
フィード「なんだとー! じゃあ、お互いライバルでもあるわけだな」
「どっちが先になれるか、競争しようぜ!」
フィード、ヤクトミ 10歳の秋――
――― the lost promise (閑話) ―――
2009.5.16 KurimCoroque(栗ムコロッケ)
2011.10.5(改)