「
激しい勢いで襲いかかる滝のような多量の水。
ウランドは軽々と避けると山吹色のコート目掛け走り出した。
山吹色のコートが次の呪文を唱え始めたと同時にウランドの拳が伸びる。
カーミラ「させぬ」
羽ばたく蝙蝠の羽。
ウランド「おっと」
顔の前に伸びたカーミラの細く白い手がウランドの鼻先を掠めた。
カーミラ「おのれちょこまかと」
カーミラが目の前を飛び去る瞬間、ウランドとカーミラの視線がかち合う。
カーミラを挑発するためニヤリと笑い掛けたその時だった。
カーミラの青い瞳にドキリと心臓が跳び跳ねた。
ウランド「?!」
ウランドは思わず左胸を押さえた。
ウランドの顔の正面に手が延びた。
「
ウランドは激しく壁に叩きつけられた。
ウランド「あいたた」
ウランドは頭を押さえながらムクリと起き上がりかけた。
しかしその時、頭上が翳った。
どさり
ウランドの上に馬乗りになるカーミラ。
カーミラ「てこずらせおって」
カーミラはウランドの両頬に手を添えた。
カーミラ「私を見ろ、ウランド殿」
カーミラの両目が青く光った。
ウランド「…」
ウランドは目を細めた。
カーミラはウランドのネクタイをほどき、その端に口づけると、怪しく笑った。

カーミラ「どうだ、ドキドキするだろう?」
ウランド「…よく見ろと言われても」
ウランドは左右を見回した。
カーミラ「ひゃ!」
ウランドが突然立ち上がったため、カーミラはウランドの上から転げ落ちた。
ウランドは横に大きく飛び、カーミラと距離をとった。が、飛びすぎて背中を壁に強打した。
ウランド「う…げっほっ」
世界がぼやけ、何一つ焦点があわない。
ウランド「すいません、メガネどこです?」
カーミラ「は?」
真正面から魔法を浴び、クロブチメガネは部屋の角で粉々になっていた。
カーミラ「わ、私の目が見えぬのか」
ウランドはポリポリと頭をかいた。
ウランド「…ええ、そもそも"私の目が見えない"ですからね、どうもすいません」
その謝罪には全く悪びれた様子はなかった。
呪文を唱える声が聞こえる。
呪文の内容から次に来る魔法を推測した。
ああ、これは下手したらケガするやつだ。
相手は流水魔法使い、水の精霊が見えていたら魔法の流れも読めるが、 あいにくウランドは爆炎魔法使い、火と風の精霊しか見ることが出来なかった。
「
ズガン!
白壁を貫く水の槍。勘で避けたギリギリ頭上。
ウランドはフーと溜め息をつき、いつもの低くボソボソとした声で呟いた。
ウランド「…困りましたねぇ」
そうしてニヤリと笑い、目を細めた。
ウランド「本当に何も見えない」
――― A.(魔導師反神使教派テロ加担事件5) ―――
2011.2.11 KurimCoroque(栗ムコロッケ)