20.5.魔導師反神使教派テロ加担事件5 back


爆水圧イド・ローク

激しい勢いで襲いかかる滝のような多量の水。
ウランドは軽々と避けると山吹色のコート目掛け走り出した。

山吹色のコートが次の呪文を唱え始めたと同時にウランドの拳が伸びる。
カーミラ「させぬ」
羽ばたく蝙蝠の羽。
ウランド「おっと」
顔の前に伸びたカーミラの細く白い手がウランドの鼻先を掠めた。
カーミラ「おのれちょこまかと」
カーミラが目の前を飛び去る瞬間、ウランドとカーミラの視線がかち合う。
カーミラを挑発するためニヤリと笑い掛けたその時だった。
カーミラの青い瞳にドキリと心臓が跳び跳ねた。
ウランド「?!」
ウランドは思わず左胸を押さえた。
ウランドの顔の正面に手が延びた。
爆水圧イド・ローク




ウランドは激しく壁に叩きつけられた。
ウランド「あいたた」
ウランドは頭を押さえながらムクリと起き上がりかけた。

しかしその時、頭上が翳った。

どさり

ウランドの上に馬乗りになるカーミラ。
カーミラ「てこずらせおって」
カーミラはウランドの両頬に手を添えた。
カーミラ「私を見ろ、ウランド殿」
カーミラの両目が青く光った。




ウランド「…」

ウランドは目を細めた。
カーミラはウランドのネクタイをほどき、その端に口づけると、怪しく笑った。

やっつけ構図

カーミラ「どうだ、ドキドキするだろう?」
ウランド「…よく見ろと言われても」
ウランドは左右を見回した。

カーミラ「ひゃ!」
ウランドが突然立ち上がったため、カーミラはウランドの上から転げ落ちた。
ウランドは横に大きく飛び、カーミラと距離をとった。が、飛びすぎて背中を壁に強打した。
ウランド「う…げっほっ」
世界がぼやけ、何一つ焦点があわない。
ウランド「すいません、メガネどこです?」
カーミラ「は?」





真正面から魔法を浴び、クロブチメガネは部屋の角で粉々になっていた。
カーミラ「わ、私の目が見えぬのか」
ウランドはポリポリと頭をかいた。
ウランド「…ええ、そもそも"私の目が見えない"ですからね、どうもすいません」
その謝罪には全く悪びれた様子はなかった。

呪文を唱える声が聞こえる。
呪文の内容から次に来る魔法を推測した。
ああ、これは下手したらケガするやつだ。
相手は流水魔法使い、水の精霊が見えていたら魔法の流れも読めるが、 あいにくウランドは爆炎魔法使い、火と風の精霊しか見ることが出来なかった。

流水槍スプ・リエル・ロー!」




ズガン!

白壁を貫く水の槍。勘で避けたギリギリ頭上。
ウランドはフーと溜め息をつき、いつもの低くボソボソとした声で呟いた。
ウランド「…困りましたねぇ」
そうしてニヤリと笑い、目を細めた。

ウランド「本当に何も見えない」




―――  A.(魔導師反神使教派テロ加担事件5) ―――






2011.2.11 KurimCoroque(栗ムコロッケ)