20.2.魔導師反神使教派テロ加担事件2 back


カーミラ「どのサイズがいいかのう」

窓のない真っ白の壁。山ほど山吹色のローブがかけられたクローゼット。
フワフワのアッシュがかった金髪にブルーの瞳の少女
――反神使教派テロリスト集団"ハイヴ"のスカウト カーミラはクローゼットの前で腕を組んで考えて込んでいた。
その後ろで壁際のベンチに腰掛け、組んだ足をブラブラと揺らすクロブチメガネの男
――"ハートのエース"ウランドは頭を壁につけ、見下ろすようにカーミラの様子を眺めていた。

ウランド「…別にどれでもいいですよ、…むしろ(そんなの)着なくてもいいんですが」
カーミラはムッとしてウランドに顔を近づけた。
カーミラ「いけませんぞ!制服は団結力の証!ウランド殿、背丈はおいくつですかな」

ウランドはクシャクシャと頭をかいた。
ウランド「…若い頃測ったときは確か180くらいでしたから、それよりちょっと縮んだくらいじゃないですか」
カーミラ「…」
カーミラは少しの間ウランドを見つめ、そして部屋を出た。
ウランド「?」
よくはわからないが、監視の目が無くなるのであればちょうどよい。

ウランドはドアノブに手をかけた。




ガチャッ

外側からドアノブが回された。
ウランド「おっと」

開かれたドアにはカーミラ。その手にはメジャー。
カーミラ「おや、お手洗いですかな?」
ウランドはカーミラの持つメジャーを見つめた。
ウランド「…ええ」

カーミラはウランドを部屋の壁際まで押し戻した。
カーミラ「しばしガマンされよ、ほれ、壁に頭と肩をつけて!」
ウランドは心底ハタ迷惑そうにカーミラを見下ろした。
ウランド「…どこまで"スカウト"のお仕事なのですか?」
カーミラはフフと嬉しそうに笑った。
カーミラ「これは私が好きでやっている。同士が増えるのはほんに嬉しくてな…185だ、ウランド殿」
どうもにも面倒なお節介娘と関わってしまったようだ、ウランドはどのように展開を持ってゆこうか考え始めた。

ウランド「…いつ知り合いの元に案内いただけるのでしょうか」

カーミラはクローゼットから山吹色のローブを取り出すと目を輝かせながらウランドに差し出した。
カーミラ「これをお召しになりなされ、きっとちょうどよいはずだ、それからボスに挨拶、お友達にはそれからだ」

ウランド「…へえ、ここのトップに会えるのですか」
魔導師でない犯罪者の親玉がどんな人物か、いささか興味を持った。
ウランドは山吹色のローブを羽織った。




――黒の塔の最上階。
ウランド「…どこのボスもテッペンがお好きですねぇ」
カーミラ「ん?何か申しましたかな?」
ウランドはニヤリと笑った。
ウランド「…単なる独り言です」

真っ白な壁に囲まれた窓一つない、ドーム型の高い天井の部屋。
ウランドは出入り口付近で立ち止まるようカーミラに制止された。
カツンカツンとカーミラのヒールの音が天井に響く。
カーミラ「ボス!新たな入団希望者を連れて参りました」

部屋の中央にポツンとある白い玉座。
ローブのフードを目深に被り、長い裾で手足すら見えない、男か女かもわからないが、独り、誰か座っている。
何かをボソボソと話しているようだった。




ウランドは違和感を感じた。
ボスと呼ばれたその人物からは生気を全く感じられなかった。

カーミラは話を終えたのか、ウランドの元へ戻ってきた。
カーミラ「ウランド殿、入団式はこれにて終わる」
カーミラの手のひらには小さなカプセル。
カーミラ「これを飲まれよ、さすれば完了だ」
ウランド「…これは何ですか?」
カーミラ「団結のための乾杯のようなものだ」
ウランドはしげしげとカプセルを眺めた。

ウランド「…水なしで飲めと?」
カーミラ「水か!すぐに準備するぞ!待っておれ!」
カーミラが部屋から出たことを確認すると、ウランドはボスと呼ばれる人物を見つめた。




そのままニッと笑うとカプセルを開け、中に詰めてあった赤い粉を胸ポケットの中に全て出した。
ウランド(赤い粉ねぇ)
そうして空になったカプセルを元通りキュッと合わせた。

「ウランド殿」

背後にはコップをもったカーミラ。
カーミラ「なぜズルをする」
ウランド「…投薬されるとは伺っておりませんでしたので、キチンと説明していただかないと、
     それはそうと何故わかったのですか?貴女、今の今まで水を取りに行ってたじゃないですか」

そうして振り向いた先のカーミラの瞳は不気味に青く光っていた。
カーミラの指先からコップが滑り落ちた。




―――  A.(魔導師反神使教派テロ加担事件2) ―――





2011.1.22 KurimCoroque(栗ムコロッケ)