ムー大陸 ジャラル国
長い足を大股に、幅をきかせながらズンズンと
その大男の歩く様に
ある者は目を背け、またある者は道を避けた。
黒髪坊主にジャラジャラピアスの大男――トウジロウはイライラしていた。
なぜなら
トウジロウ「どこにあんねん、裏ギルド」
魔薬テロ犯ギルティンの足取りを追うべく、トランプから派遣されたトウジロウとリケ。
手がかりが殆ど無い中、魔薬"免罪符"蔓延の境界線をギルティンの位置特定の目安とし、情報を得るために各国北端の街の裏ギルドを探していた。
トウジロウの頭がついに沸騰しかけたときであった。
『トウジロウさん』
耳元からリケの声。
魔導師専用具による風魔法の通信技術――
たまたま目があったチンピラに絡みかけていたトウジロウはチンピラの胸ぐらをポイと離し、道端にしゃがみこんだ。
トウジロウ「リケは〜ん、ボクこの仕事向いてへんみたいやねん、どないしよ〜」
トウジロウの拗ねたようなからかうような口振りに、リケはこりゃだめだ、と思った。
『今どちらに』
トウジロウ「未だにジャラル国(一カ国目)ですわぁ、リケはん何十カ国目?」←明らかにからかっている
『ちょうどいい、一つ相談が』
トウジロウ「無視かい」
『ギルティンがジャラル国にいるかもしれないという情報を得ました』
トウジロウはニヤリと笑った。
トウジロウ「ホンマかいな」
『私もそちらへ向かいます、トウジロウさんは少しでも情報を』
トウジロウ「それ俺に言うか」
『特徴は』
トウジロウ「…」←反論を諦めた
『背は155〜160ほどで、ハンチング帽を目深に被っていて、髭面』
トウジロウ「そんなんそこらじゅうおるがな」
『"恰幅のいい男"よりかは具体的でしょ、それから一、二週間前にナイム国西北部で目撃情報アリ』
トウジロウは立ち上がった。
トウジロウ「しゃあないな」
トウジロウはバサリと地図を広げ、目を落とした。
トウジロウ「ジャラル国の中部にクジムいう街があるさかい、明朝そこのハンターズで落ち合うでええな」
『それまでにクジム以北に情報がないかはお願いしますね』
トウジロウ「諜報の才能ナシのボクにそないアッパーな要求せぇへんといてや」
『はいはい、』
通信は切られた。
太陽は頂点に昇りかけ。
マジックワープ駆使してもこれは徹夜作業やな、いやそれでも間に合うか
トウジロウは吸っていたタバコをポトリと落とし、グリグリと雪駄で揉み消しながら、新しいタバコに火をつけた。
軽く白い煙を吐くと、ニヤリと笑った。
トランプの隊員にあるまじきだが、明日までには物理的に不可能と思うと、ようやく自身に火がついた。
トウジロウ「やったろやんけ」
――― N.B-Chase(とある国にて) ―――
2010.10.23 KurimCoroque(栗ムコロッケ)