とあるの街 路地裏の廃屋 裏ギルド
道中裏ギルドを目指す女性エテルと出会い、裏ギルドで話し込んでいたリケ。
会話の中でエテルから魔薬テロ犯ギルティンを知っているという話が出て、そのあまりに突拍子のない展開にリケはきょとんと固まった。
リケ「えと…どんな人?どうして知っているの?」
エテル「なんか旅の途中とかで…こう、太った感じの中年の面白いおじさんで」
リケ(面白いかはともかく特徴はあってるな)
エテル「ハンチング帽をかぶってたッス!背はこんくらい」
エテルは手をヒラヒラさせた。
リケ(160もないくらいか)
エテル「リケさんのギルティンさんとおんなじッスか?」
リケ「何かもらわなかった?」
エテルは少し笑顔がひきつった。
エテル「…ラムネたくさんくれたッス…でも…先輩が売ったら金になるから…食べるなって」
エテルは泣き出した。
リケ(あちゃーしまった、そう繋がるか)
リケはエテルを宥めた。
リケ「辛いことを思い出させてごめん、あといくつか教えて。その話、いつ頃のもの?」
エテル(ラプリィに会う前だから…)
「多分一、二週間前くらいッス」
リケ(最近!!)
「どこで会ったの?それから何処へ行った?」
リケのただならぬ雰囲気にエテルは何かを感じ取ったようだった。
エテル「ナイム国ッス。ジャラル国からパンゲア大陸に出るって言ってたッス」
リケ(…)
「…わざわざ言っていたの?どこからどこに行くつもりって」
エテル「はい…」
"何か"ある、罠かもしれない
リケは直感的にそう思った。
部下が送ってきた"メモリアリスタル"の映像
顔は映っていない、特徴は恰幅のいい男というものだけ。
リケ(真に受けるべきか否か)
リケは少しの間腕を組んで考え込んだ。
エテルは困ったようにリケの顔を伺った。
エテル「えと…エテルが知っているのはそのくらいッス」
リケ「うん、ありがと。カウンターでちょっと店員と話したらここを出るわ」
エテルは心許なさそうに頷いた。
リケはニコリと笑った。
リケ「あなたはどうするの?…とは敢えて聞かないわ。でもちょっと話をしてわかった」
エテル「何を?」
リケ「あなた、素直で親切で、とっても素敵な女性ね」
エテル「え…エテルがッスか!?」
リケはうなずくと席を立った。
エテルは一人になったテーブルで一口コーヒーを飲むと、キョロキョロと辺りを見回した。
ごくりと生唾を飲む。
店主からは"狂犬"の恨みを買うことを恐れ、懸賞金をかけることを拒否された。
かわりに、個人に殺害を依頼する方法を勧められた。
そうして紹介された、テーブルで一人酒を呑む怪しげな男に、僅かな金とともに"狂犬"ハイジの殺害を依頼した。
怪しげな男は当然のように金を持ち逃げするつもりであった。
そうとは知らず、エテルはカタカタと震える足でカウンターに向かった。
コーヒー代を払うために再びカウンターへ向かったとき、リケが払った金額が二人分であったことがわかった。
エテル「…」
胸にズシリと何かがのしかかった気がした。
――― N.B-Chase(とある裏ギルドにて) ―――
2010.10.16 KurimCoroque(栗ムコロッケ)