15.4.In the twilight! back


ジャラル国北部の街エバル
荒くれ共が集まる酒場"不穏な休憩所アンレストラウンジ"

街のチンピラにエバルの街の"裏ギルド"として案内されたトウジロウであったが、
そこは"裏ギルド"ではなくワケ有りの人間に仕事を斡旋するという怪しい男達の溜まり場であった。
騙されたことを知ったトウジロウは男たちをタコ殴り、ボスと思しき男のもとへ歩み寄る。
トウジロウの拳が振りかざされた瞬間、
トウジロウの前に立ちはだかったのは、町で追い払った娼婦を自称する少女であった。


トウジロウ「おいおい、ここはガキが出入りするとこやないやろ」
少女「ここは!女もガキも関係ない!!」
トウジロウは煙草をくわえ、火をつけた。
少女「この人は…あたしに仕事をくれたんだ!!」
トウジロウは鼻で笑った。
トウジロウ「もろた仕事が身売りやて?」
少女「そうだよ!」
トウジロウ「娼婦やんのにソイツから許可がいるんかい」
少女「そうだよ!街の治安維持とか何かで、
   本当はやっちゃダメなの!
   でもこの人の許可があれば…」
トウジロウ「ソイツは誰に許可取ってんねん」
少女「え…」




トウジロウはニヤリと笑った。
トウジロウ「お前、一個仕事こなす毎に、
      ソイツから金とられとんちゃう?」
少女の声が小さくなった。
少女「斡旋料とここの所属料…」
トウジロウは声を上げて笑った。
トウジロウ「ボられとんやん!
      他でそないな制度ないとこなんぞゴマンとあんで!」
      
少女は目が泳いでいる。
少女「だ…だって、お金がいるんだもん、
   薬代や生活費…他の町に移住するお金なんかない…」
トウジロウ「そらソイツから余計な金とられとるからな。
      ソイツもソイツでお前みたいな金ヅルおらなったら稼ぎが減る、
      せやからお前にはギリギリの金しか渡せへんようにしとる、それだけや」
少女「嘘だ!」
トウジロウ「かもな」
そう言うと少女の後ろで丸まっている男を指差した。
トウジロウ「今からソイツに聞いたるわ」

指を差された男は突然笑い出した。
トウジロウ「あん?」
男「勝った」




トウジロウはクルリと体を返し、後ろへ飛んだ。

ズガン!

瞬間、鋭く先の尖った氷塊がトウジロウの顔の前を横切り、壁に深く突き刺さった。

トウジロウはニヤリと笑った。
トウジロウ「最近は魔法を顔に向けて打ったらあかんて習わへんのかい」

トウジロウの視線の先――出入り口でトウジロウに向けて手をかざしている男。
サングラスで顔を隠し背中に槍を背負ったその男に、トウジロウは見覚えがあった。

槍の男は少女の横でへたり込む大男に声をかけた。
槍の男「ボスさん平気かい?」
大男は立ち上がった。
大男「ガハハハ!見たか!こっちは魔導師先生 がついているんだぞ!」
槍の男「観念しな」
トウジロウは煙草をふかした。
トウジロウ「身の程知らずいうんはこのことやな」




槍の男は槍を構えた。
切っ先が氷でみるみる大きくなってゆく。
トウジロウ「来いや」

氷の切っ先から目にもとまらぬスピードの突きが繰り出された。
トウジロウは軽々それをよけ、次の瞬間には槍の男の目の前にトウジロウの膝があった。

鈍い音を立て、槍の男は後ろに吹き飛んだ。
槍の男の口から、ボロボロと歯が落ちた。
槍の男「貴様…!!」
たちまち部屋が冷気に満ち、突風が吹き荒れた。
少女「きゃ!」
トウジロウは新しい煙草に火をつけた。
槍の男「爆風雪フ・リザ・ルド…!!」
トウジロウは「ふう」と煙を吐いた。
トウジロウ「精霊分解オズ・ラジ・ルーフ
トウジロウの言葉に反応し冷気と風は何事もなかったようになくなった。

槍の男「な…魔導師…!?」
トウジロウ「こないなクソ狭いとこで"爆風雪"なんぞ使うなや」
槍の男「ジパング人…」
トウジロウ「さっきっからアホばっか…自分どいつに教わってん」
槍の男「…の、男!!」

槍の男の顔から一気に血の気が引いた。




トウジロウ「お、そうや、これつけてへんかったな」
トウジロウはポケットから魔導師バッヂを取り出し、胸元につけた。
トウジロウ「俺、自分見覚えあんねんけど―…なんやっけ?犯罪魔導師の」
槍の男は慌てて逃げ出した。
…が、トウジロウの足が一足早かった。

ガァン!

トウジロウの足が乱暴に扉を閉めた。
トウジロウ「もののついでや、俺直々に逮捕したるわ」
槍の男は力なくへたり込んだ。
大男「ま、魔導師先生!?」
トウジロウ「そうや〜自己紹介してへんかったわ」
トウジロウは着ていた黒いTシャツの、まくっていた袖を下ろした。
下ろした袖から覗く竜と剣の紋――
大男「ト…トランプ…!!の、ジパング人の…男…!!」

大男は再び尻餅をついた。
大男「スペードのエース!!」
トウジロウ「観念しいや」

少女は訳も分からずただ男たちのやりとりを眺めていた。




―――  N.B-Chase(In the twilight!) ―――





2010.6.27 KurimCoroque(栗ムコロッケ)