ハートのエース 執務室
デスクには ハートのエース ウランド・ヴァン・ウィンクル
その目の前に立つのは
クラブのエース リケ・ピスドロー
スペードのエース イチマツ・トウジロウ
ウランドは独特の低くボソボソした声で話を切り出した。
ウランド「…ハートのキングからの伝言です。」
トウジロウはデスクを叩いた。
トウジロウ「ちょお待てや」
ウランドは顔色一つ変えずにトウジロウを見た。
ウランド「…なんでしょう?」
トウジロウ「なんで当のキングが直接来ぇへんねん!
オレらはエースやぞ!」
そう、まさに今、ウランドが言いかけていたのは、カグヤから2人のエースに向けての指示だった。
ウランド「…キングはお忙しい」
トウジロウ「なめくさっとる」
トウジロウは吐き捨てた。
リケは溜息をついた。
ウランド「…話の続きですが、
リケさんをリーダーとして、
トウジロウと2人編成のチームで諜報および犯人確保をお願いします」
トウジロウがすぐさま反論した。
トウジロウ「なーんーやーとーーー!
なんでオレが諜報とか地っっっ味ぃ〜〜〜なことせなあかんねん!
つか、部下つけへんやと!?」
ウランドの胸ぐらをつかむトウジロウをリケが抑えた。
リケ「ええーと、ウランド、その心は?」
ウランドは胸ぐらを掴まれたまま無表情で答えた。
ウランド「…その他の隊員たちは中将クラスをリーダーとし、各案件にあたらせます」
トウジロウはウランドから手を離した。
トウジロウ「数で攻めるてか?
それでなんとかなっとったら、こない案件溜まってへんわ」
ウランド「…通常は」
リケはウランドに怪訝そうな表情を向けた。
リケ「…通常は?」
ウランド「…これより、ハートは超特別態勢を敷きます」
トウジロウ「超特別?なんやそれ」
ウランドは淡々と答えた。
ウランド「…全案件を"エース出動レベル"とし、
一般隊員は全員諜報に回します」
トウジロウ「…ハァぁっ!?」
リケ「ぜ…全案件!?可能なの!?そんなことが!?」
通常、トランプが犯人逮捕をするためには
犯人のいる国に対してさまざまな手続きが必要となり、
その手続きの複雑かつ煩雑さが案件を長引かせている一因でもあった。
しかし、"エース出動レベル"は"超緊急的なレベルの事件"であるという観点から、
すべてを事後手続き可能な特権的案件に切り替わり、
国家に対する強制力が発生する。
ウランド「…その超特別態勢だって旨を各国に周知したんで、
…まあ、強制力はウチにあるはずなんで、問題ないでしょう。
なにかマズければエースの
リケ(自分のクビかけて、全案件を自分で受け持つ…)
リケはトウジロウを見た。
リケ「…ハートの"超特別態勢"に対する覚悟が見えました。
これ以上はもういいですよね。」
トウジロウはポケットに手を突っ込んだ。
トウジロウ「ま、リーダー様がそう言いはるなら。
けど、一言いわせてぇな」
ウランド「…なに」
トウジロウはニヤリと笑った。
トウジロウ「そっちのがおもろそうやんけ」
ウランドもまたニヤリと笑った。
ウランド「どっちが早く終わるか、賭けようか」
トウジロウ「そらおもろいな」
リケは溜息をついた。
リケ「困ってる人や傷ついている人がいるコトなのよ!
それで遊ぶんじゃないの!」
2人はニヤニヤしたまま「はいはい」と答えた。
リケは「こりゃあだめだ」と額に手を当てた。
リケ「では、トウジロウさん。
明朝マルキュウマルマルにナイム国のエリドゥの町のハンターズで落ち合いましょう。
そこで聞き込みしていくつか当りをつけてから二手に分かれます。
連絡は魔導師専用道具で。
アーティファクトも忘れず持ってきてくださいね!」
トウジロウはだるそうにあくびした。
トウジロウ「はいよ〜」
トウジロウの様子を確認すると、
リケは忙しい忙しいと急いだ様子で執務室を出た。
ウランドは頬杖をついた。
ウランド「…おい」
トウジロウは頭を掻いた。
トウジロウ「わかっとるがな。
いったんオレの執務室戻らなあかんねん」
ウランドは椅子にもたれかかって溜息をついた。
ウランド「…印鑑ぐらいもっとけよ」
トウジロウは呆れたように溜息をついた。
トウジロウ「お前に言われたないわ」
リケが急いで自分の部屋に戻ると、デスクにいつの間にか積まれていた書類の山が目に飛び込んできた。
リケ(…明日の朝までに片づけないと)
リケはデスクについた。
しばらくしてノックの音が響いた。
リケ(またか…)
「どーぞ」
扉から出てきたのはトウジロウ。
リケ「?何か不明点でも?」
トウジロウはズカズカと歩を進め、
窓際にあった卓と椅子を持ってくると、
リケのデスクの正面でそれを置き、椅子にドカリと腰を落とした。
そして書類の山から適当にごっそりと取り、自分の前の卓に置いた。
リケ「え?え?」
トウジロウ「ペン2本ある?」
リケ「え…ええ」
トウジロウ「エースはエースでも、クラブ以外のあかんやつは頼むわ」
それだけ言うと、トウジロウは書類に向かいだした。
リケは少しの間きょとんとトウジロウを見つめていたが、
一言だけつぶやくと、再び書類に向かった。
リケ「…ありがと」
トウジロウ「惚れられても困んで?」
リケ「ないから安心して」
…まったくもー…でもこれで、
今日中には終われるな。

――― N.B-Chase(Steady!) ―――
2010.5.15 KurimCoroque(栗ムコロッケ)