24.stir the blaze back



パチパチと、火が跳ねる。
男たちの下品な笑い声。
その様子を満足そうに眺める一人の男。

笑う男たちのうちの一人が言った。
「ウーさん、"清掃"完了しました!」
ウーと呼ばれた男は生気のない薄ら笑いを浮かべ人差し指と親指で輪を作って見せた。
「ごくろ〜」

山中の拓けた土地。
燃え盛る舘。
崩れ落ちた表札に記されていたのは"紫の人々"


―――― stir the blaze(巻き起こる炎恨) ――――


フィード「で、そのパーピーなんとかってのは何処にあんだよ」
エオル「"紫の人々パープルピープル"! 結構距離あるよ、ほら、あの山の中」
エオルの指差した先にはうっすら霞掛かった7、800メートル以上はあるであろう緑の山。

疎らなヤシの木、サラサラとした白砂がどこまでも続く道、海から大分離れたはずだが、未だに蟹が横切っている――パンゲア大陸南部ツーレ半島西部
サンサンと太陽が降り注ぎ、それでいて湿度が高く、蒸し暑い。

フィードは項垂れた。
フィード「暑い、腹減った、疲れた歩きたくない」
エオル「はいはい、ていうか、それ脱げば」
エオルの呆れ返った視線の先には真っ黒なコートを着込み、更にそのフードも目深に被った頭のてっぺんから爪先まで黒づくめのフィードの姿。
フィード「……いやだ! これは俺様のトレードマークなのだ」
エオルはフィードの頭のフードを引っ張った。すかさずフィードも抵抗した。
エオル「うざい! ムサイ! 暑っ苦しい!」
フィード「ぬをを! やめんかっ!」
その様子を見、慌てて仲裁に入ろうとしたよしのは進行方向を見、気がついた。
よしの「あら?」
よしのの声に、二人の魔導師も目の前に改めて視線を向けた。
周囲に生えているヤシの木とは違う、黒に近い茶色の、ゴツゴツとした、ヤシの木数本分はあろうかという幹。一行が見上げるとそれはヤシの木より遥か高くまで伸び、前方の空を覆っている。さらに並んで数メートルおきに、三本、四本と同じ幹が立っている。
よしのはポカンと見上げながら呟いた。
よしの「大きなヤシの木ですわね」
フィード「ヤシの木かあ?」
エオル「なんかイボイボしてて気持ち悪いね……」
ブツブツと、呪文を唱える声が聞こえる。エオルはすぐとなりの黒づくめに目をやった。
エオル「何し、」
フィード「小爆炎グラン・デ!」

ドカァン!

ズシンと内臓に響く振動、鼓膜を揺らす爆発音、遅れて、辺りに真っ白な煙が立ち込めた。
エオル「ちょっとー! 新大陸上陸直後に目立つ行動止めてくんない!?」
フィードは満足そうにふんぞり返った。
フィード「ギャーーッハッハ! 俺様の行く先を邪魔するやつはこうだ!」

風が流れ、煙が晴れ、現れたのは傷一つついていない焦げ茶色の幹。
フィード「ぬおっ!?」
エオル「無傷……?」
エオルはもう一度上空を見上げた。
幹の上に広がる――
エオル「……蟹の腹……」
天辺からひょっこりと触覚のようなものが生え、こちらを見つめている。
エオル「カニーーーーっ!」
どうやらこのあたりの主のようである。フィードが魔法をぶつけたのは蟹の足だったようだ。
フィード「カニって目ェ三つあったっけか」
よくよく見ると、真ん中に小さな"触覚"がもう一つある。それはこちらに手を降り、何か叫んでいるようだった。
エオル「目じゃなくて、」
よしの「おばあさん?」
巨大蟹のまるで触覚のように飛び出した蟹の目と目の間に、紫色の髪に紫陽花柄の派手なワンピースを着た老婆が立っている。さらに、耳をすましてみると――

「助けてくれぇい」



        



エオル「えぇええ!?」
よしの「あんなに高いところに……大変です!」
フィード「そもそもなんであんなとこにいやがんだ?」

焦げ茶色の巨大な幹――巨大蟹の足が持ち上がった。ズシンと音を立て白砂の大地を抉ると鈍い摩擦音と共に巨体は前方へ移動した。
フィード「カニなのに前歩き!」
エオル「そんなことより、あのお婆さん助けないと!」
勢いをつけるエオルをフィードの白い手がひっ掴んだ。
エオル「なに!?」
フィード「あの婆さん降ろしたら、ドでかい魔法一発ぶちこむから離れろよ」
エオル「は? 倒す必要ないでしょ」
フィード「カニミソ食いた、」

ゴン

フィードは頭を押さえてしゃがみこんだ。
エオル「生態系が崩れるから!」
そして次々と大地を抉りながら上下運動を繰り返す焦げ茶色の幹を見上げた。
エオル(イボイボ気持ち悪い……)
そしてよしのに目を向け、フィードを指差した。
エオル「よしのさん、アホなことしないように見張っといて!」

エオルは魔導師の超人的な跳躍力で、蟹の足の表面にある"イボイボ"を踏み台に、あっという間にヤシの木の遥か上空の、蟹の甲羅に飛び乗った。
蟹の甲羅は太陽の照り返しが強く、卵の一つでも落とせば目玉焼きが焼けそうなくらいだった。エオルの顎から汗が滴った。
"触覚"目指して甲羅の"丘"を登っていくと二本の"触覚"の間にへたり込む、先ほどの老婆を発見した。この焼けるような蒸し暑さだ、脱水症状を起こしかけているようだった。
エオルは老婆の元へ駆け寄った。
エオル「大丈夫ですか!?」
老婆はエオルをみるなりこれまでの元気のなさが嘘のように嬉々として飛び付いた。
老婆「待ってたよぉ! 早く降ろしとくれ!」
エオル「はあ……」


よしの「降りていらっしゃいましたよ」
よしのはすぐとなりでしゃがみこんで頬杖つきながらふてくされている銀髪に目を向けた。フィードは口を尖らせた。
フィード「興味ねー」


蟹の背中からよしののもとへ着地したエオルの顔は渋かった。着地した途端、エオルにおんぶされていた老婆は足をバタバタと降り、エオルの頭をポカポカと叩いた。

なんというえづらww

老婆「お姫様抱っこがいいって言ったろうがっ!」
エオル「痛っ! 高いところから降りるのにそれは危ないって言ったでしょっ!」
老婆は吼えた。
老婆「けちんぼめ!」
エオル「はいはい、降ろしますよ」
エオルは身を屈めた。だが老婆は地に足をつけようとしなかった。
老婆「暑くて疲れた、立てない」
エオル「水飲みます?」
「くれ」と手を差し出し、奪い取るように乱暴に水筒を手にするとがばがばと水を飲み始めた。
フィード「てめえババァ全部飲むなよ」
よしの「いきなりそんなに召し上がってはお体に障ります」
老婆「なんだい若いのにケチ臭いね」
エオル「いや、少なくとも女の子のほうは本当に心配してますよ」
フィード「どういう意味だコラ」
背中に感じる体温はやはり少し高めに感じた。
エオル「ちょっと木陰で休もっか」
だが、木陰といっても丈の高いヤシの木ばかりで全員が入れるほどの木陰はない。ふと、少し前方に移動しただけで再び木のように動かなくなった巨大蟹に目が向かった。



        
        
        

――蟹の影。
座っているだけで地面からの蒸せるような熱気に襲われたが、直射日光が当たらないだけましか、とエオルは思った。
老婆「あちい」
フィード「あぢい」
よしの「ボウイサナにお願いしましょうか」
フィード「やめとけババァの口から魂飛び出んぞ」
老婆「誰がババァだ」
エオル「……お婆さん、名前は?」
老婆はポシェットから葉巻を取り出した。
老婆「エリスだ」
そうして手慣れたように葉巻を口に加え、マッチを擦ると煙を吐いた。
エリス「お前たちは」

お婆さんと呼ぶと怒るので名前を聞いただけで、エオルはとりわけ交流を持とうという気はさらさらなかった。
エオル「俺はエオルといいます、女の子がよしのさん、黒づくめがフィード」
エリスはよしのを見た。
エリス「男二人抱え込んでウハウハだろうね、羨ましいったらありゃしないよ」
よしの「うはうは??」
エオル「そんなんじゃないですから」
そうしてフィードに目配せすると二人の魔導師は同時に立ち上がった。
フィード「じゃあなババァ」
エリス「だから、誰がババァだ!!」
エオル「もうあんな危ないところに登っちゃだめだよ」
エリス「お、おい……」
よしの「こんな周りに何もないところでお一人は危ないですわ」
二人の魔導師はギクリと固まった。



        
        
        
        
        
よしのはエオルを見上げた。
よしの「どうか次に人が集まるところまで」
エオルは頬を掻いて答えを渋った。ただでさえ自分たちはお尋ね者であるのに、その上体力のない老人と行動を共にするにはお互い危険だと感じていた。それよりなにより、
エオル(この人……お尋ね者とわかったら絶対通報する)
二人の魔導師の共通の考えがこれだった。
エリス「女のほうがよっぽどわかってるじゃないか」
エオルはため息をついて地面に地図を広げた。
エオル「エリスさん、目的地は?」
エリスは煙を吐き、左隣にいたフィードの、更に背後に目を向けた。
エリス「あの山の天辺だ」

一行が向けた視線の先のその山は、先ほど一行が目的地に据えていた、あの山だった。エリスの、紫に染められた白髪混じりの髪を風が撫でた。
エオル「……こんな僻地で、しかもお一人で登山ですか」
キナ臭い、と疑いの目を向けるエオルを、エリスは鼻で笑った。
エリス「妹がいんのさ、あの山に」
よしの「まあ、妹さんにお会いに? 素敵ですね」
フィード「墓参りか?」
エオル「フィ〜ド〜」
エリス「健在だよ、バカにすんな」
エリスは再び葉巻をくわえ、煙を吐いた。
エリス「楽しようとあのカニに乗ったはいいが、ちっとも動きゃしなくってね。あんたらは?」
エオル「えーと……」

エオルの頭に、ふとあることが思い付いた。地図で見る限りしばらくは集落の一つもない。これから向かうところは犯罪組織の真っ只中。その前にエリスの妹のところで、一服休ませてもらえたなら助かることこの上ない。
だが、そんなまるでエリスを利用するような、自分はいつからそんな意地汚い人間になったのか、エオルは心の中で頭を抱えた。

フィード「おいババァ、妹んとこ連れてってやるから一泊させろ」

エオル(こいつのせいかーーーーっ)
エリスはポリポリと眉間を掻いた。
エリス「図々しいガキだね」
そうしてニヤリと笑みを浮かべた。
エリス「いいだろう、妹ん家は広いからね、泊めてやるよ」
エオル「え! 本当ですか! 助かります!」
フィード「頼んでみるもんだな」
エオルはジトリと横目でフィードを見た。
エオル「……人に物を頼む態度じゃなかったよね?」

エリス「さてと」
エオルの鍛えられた太い腕にエリスの皺だらけの細い腕が絡まった。
エオル(えっ)
エリス「じゃあ行くか」



        



フィード「ヒューヒュー」
エオル「……エリスさん、余計暑いですし、ね?」
しばらくエリスとエオルの攻防が続いたが、結局エオルが折れる形となった。腕に絡みつくエリスをそのままに、とぼとぼと歩く疲れきった金髪の背中をフィードはニヤニヤと眺めていた。
フィード「面白ぇ絵面だな」
よしのは前を歩くエオルとエリスをただ見つめて黙っていた。
フィード「なんだよ」
よしの「……なんだか、よくわからないのですが、モヤモヤします……」
フィードはカラカラと声をあげて笑った。
フィード「んじゃあ、お前もやってくれば」
よしのは顔を真っ赤にして何度も首を降った。
フィード「しょうがねぇな」
フィードはよしのの手を引いて走り出した。

エオル「うわっ」
突然勢いよく背後から腕に絡まってきた黒い袖。エオルは両腕をそれぞれエリスとフィードに組まれる形となった。そのフィードのとなりには手を引かれる形でよしの。
フィード「仲間外れにすんなよー! よしのがすねてんぞー」
エリス「生意気な小娘だね、彼女面かい」
よしのは顔を真っ赤にしてパタパタと顔の前で手のひらを振った。
よしの「めめめ滅相もありません」
エオル「あの、ほんとに暑いから……」





山に近づくにつれ、木の根や岩が足場を悪くし、エリスの足もあり、山の麓にたどり着くまで丸二日と半日かかった。
エオル「この山って山道みたいな正規のルートってあるんですか」
エリスは近くの岩に腰を下ろし、葉巻をふかした。
エリス「馬車が出入りするからね、ただ、多分ここの真裏だ」
エオルはそりゃそうだ、と思った。なんせ自分たちは僻地側から来たからだ。そんなところにわざわざ道など作るはずが……

フィード「んなわけねぇ、あるはずだろ」

エリスは訝しげにフィードを見つめた。
フィード「海沿いの村の連中が、この山のやつと荷物の運搬の取引してる、一般に知られてねぇ秘密の道かなんかがあるはずだ」
エオル「確かに」
エリスは舌打ちをして、まだ火をつけたばかりの葉巻を腰掛けていた岩に揉み消した。
エリス「なんで知ってんだい、そんなこと」
エオルは一瞬空を見上げそれからニコリと作り笑顔を向けた。
エオル「ちょっと」

エリスはエオルの胸ぐらを掴んだ。
エリス「"紫の人々パープルピープル"を捕まえに来たのかい?」
そのあまりの凄みに、エオルは思わず両手を上げた。
エオル「いいえ、そうではないですが……なぜ魔薬業者なんてご存知なんですか?」
エリス「そうじゃないなら何なんだい!?」

よしのはさらに強くエオルの胸ぐらを締め上げるエリスの手に自らの手を重ねた。
よしの「お離しになって」
エリス「なんだい偉そうに……」
黒く真っ直ぐな、毅然とした瞳。自然と、溶かされるように、エオルの胸ぐらからエリスの手が離れた。
エリス「はん、良いとこのオジョウサマかい」
エリスは一人歩き出した。
エオル「どこに……」
エリスは振り向くことなく手を振った。
エリス「別行動だ、じゃあな」
エオル「え、ちょっと」
草木の中を分けいったエリスは突然姿を消した。
エオル「エリスさん!?」
駆け寄ったエオルもまた、姿を消した。
よしの「エオル様! エリス様!」
同じく駆け寄りかけたよしのの襟首をフィードの白い手が捕まえた。そうして両手をポケットに突っ込みのしのしと二人が消えた地点に向かった。よしのも慌ててフィードの袖をつかみ、後を追った。



        
        
        
  
ギィィィ……バタン

二人がいなくなった場所の地面には円形の鉄の蓋があり、丁度閉じたところだった。外側から取っ手のようなものはなく、地面にもピッタリ隙間なくはまっているため、こじ開けようにも梃子さえ使えない。フィードはボキボキと指をならした。
フィード「んじゃあ壊すか」
クリス「よく見ろバカ」
フィードはよしのの肩に乗る丸々とした黒猫を睨み付けた。
フィード「誰がバカだと?」
クリス「お前だお前」
フィード「なにおう!?」
クリスににじりよるフィードの両頬を、よしのの小さな手が覆った。そして

グキッ

フィード「いってぇ!」
フィードの首は再び、そして無理矢理"鉄の蓋"へ向けられた。
よしの「ケンカされている場合ではございません!」
フィード「わーったよ!」
クリス「よしのちゃん、かっこいい♡」
フィードはブツブツと文句を言いながら、"鉄の蓋"の上に被さる葉や土を足で避けた。
フィード「うわ、アブねぇ、魔法返しの魔法陣サークルじゃねぇか!」
クリスはよしのの肩の上であくびした。
クリス「ちっ、そのままてめぇの腕吹き飛ばしゃよかったのによ」
フィード「なんだとこらぁ」
よしの「おふたりとも!」

フィードはばつが悪そうに顔をしかめ、三度"鉄の蓋"に目をやった。よく見ると、"D14"と番号のようなものがふられている。
フィード「他にも似たようなのがありそうだな」
クリス「果たしてどこにつながっているか」



        



エオル「イテテ……」

エリス「あらやだねぇ、お前そんなにアタシに気があんのかい」

エオル「へっ!?」

穴に落ちると滑り台のように地下まで降りており、何一つ抗う術なく滑り降り、そのまま滑り台から放り出された。その放り出された先は丁度同じように放り出され仰向けに倒れ込んだエリスの真上だった。
エオル「わー! ごめんなさい!」
エオルは慌てて飛び退いた。エリスは頭を擦りながらムクリと上体を起こした。
エリス「こんなとこまで追ってきちまってよ」
言われて初めてエオルは辺りを見回した。人の手で掘られた坑道のようである。ならされた地面はかなりの横幅があり、それこそ運搬用の馬車が方向転換も加えて十二分に行き来できる程であった。壁に等間隔に並んだランタンがずっと奥まで続いている。

エオル「エリスさん、ここが何か、知っているんですか?」
エリスは葉巻を取り出した。そして坑道の奥へと歩き始めた。エオルは後を追った。
エリス「何だと思うんだい?」
エオル「坑道のように見えますけど、地図上ではたしか坑山ではなかったですよね……」
エリス「さあねえ、地図に載っていないだけかも知れないよ」
エオルはチラリとエリスの横顔を見た。一見何事も無かったように涼しげな顔をしているが……
エオル「"紫の人々"」
エリスの眉がピクリと動いた。
エオル「ご存知なんですね?」
エリス「何の用なんだい」
エオル「あるお宝を探して旅しています。それを魔薬業者が持っていると聞きまして、その手がかりがないかとしらみ潰しに業者を当たろうとしているところです」
決して捕まえに来たというわけではありません、と付け加え、エオルはエリスの反応を待った。エリスは葉巻を加えたまま、口の隙間から煙混じりのため息をついた。

エリス「……妹だよ」

エオル「え?」
エリス「"紫の人々"はアタシの妹がヘッドやってんのさ」
エオルは訳がわからないと口をパクパクとさせた。
エリス「アタシは町なかで薬局やっててさ、副業で魔薬の仲介もやってるわけ」
エオル「はあ……?」
エリス「ところがさ、先日発注したものの物が来なくてね、先払いだからクレームつけてやろうと思ってさ」
エオル(クレームつけにわざわざこんなところまで!?)

エリスは笑った。
エリス「おかしいだろ、姉が薬剤師で妹が魔薬業者だなんて」

若い頃、同じ薬剤師になる夢を抱き、必死に勉強した。悔しいことに成績は姉よりも妹のほうが優秀だった。姉もなんとか勉強し、薬剤師の学校に入学することができた。翌年が妹の受験のはずだった。
エリス「父親が流行り病に倒れてね、妹の分の学費までは払えなくなっちまったんだよ」
エオル「……妹さん、さぞ悔しかったでしょうに」
エリス「そのせいかグレちまってね、今じゃ立派な魔薬チームのリーダーさ」
エオルはうかがうようにエリスをちらりと見た。
エオル「極端な気もしますが……魔薬の仲介をしているのは、罪滅ぼしというか、その、妹さんに悪いと思って?」
葉巻をふかしながら、エリスはぼんやりと前を見つめた。
エリス「さあねぇ、ところで、なんか焦げ臭くないかい?」



        



フィード「あーっ! チキショウ面倒くせえ!」
よしのを抱え、魔導師の超人的な脚力で道無き山の斜面を駆け登る。生い茂る木々や蔦がよしのに当たらぬよう細心の注意を払いながらの登山だった。
よしのの腕の中で気持ち良さそうに丸まるクリスがポツリと呟いた。
クリス「お前ら登山となると途端にはぐれるな」
フィード「うっせーバカネコ」
よしの「フィード様! あれ……」
よしのの指差す方角は丁度生い茂る木々がパックリと割れ、山頂あたりがよく見えた。その頂の少し下あたりに、うっすらと白い煙が上がっている。
フィード「おっ! あのババァの妹がいるとかいう村か?」
フィードは速度を上げた。



◆◆◆
エリス「なんだい、これ……」
"坑道"は進むにつれ焦げ臭さが増し、さらに進むとそこには何人もの男たちが倒れていた。その誰もが激しく暴行を加えられた跡があり、体を引きずりながらなんとか坑道へ逃げ込んだものの力尽きたようだった。エオルは思わず顔をしかめ、口を覆った。
エオル「……ひどい怪我ですね……"紫の人々"の構成員?」
壁で葉巻を揉み消し、エリスは腕を組んだ。
エリス「さあねぇ、人数多いから覚えちゃいないよ」
一見、平静を装っている風であったその表情は歪み、脂汗をかき、明らかに動揺しているようだった。
エオル「急ぎましょう」
エオルはエリスを抱え、地を蹴った。



◆◆◆
白い煙の方角に近づくにつれ焦げ臭さに混じって、なんとも耐え難い腐臭と人工物の焦げるような臭いが混じり始めた。
よしのは思わず鼻と口を覆った。
よしの「なんでしょう、この臭い……」

しばらく進むと、突然フィードは足を止めた。よしのは震える手で口を覆った。
よしの「……なんという、ことでしょう……」
生い茂る草木の間に、まるで一風景かのように転がる焼け爛れた男たち。
よしの「フィード様! 降ろしてくださいまし!」
フィードの背中から降りると、よしのはヤサカニを発動した。よしのの足元から風が渦巻き、光とともに色とりどりの宝珠が姿を現した。
よしの「せんゆ!」
宝珠たちが回り、ライム色の宝珠がよしのの正面にくると輝きだし、光の中からライム色に輝く狛犬が飛び出した。
フィード「よしの」
よしのは振り向かなかった。
フィード「よしの、ムダだ、」
よしの「せんゆ!」
フィードの言葉を遮るように、上げたよしのの声は震えていた。狛犬は戸惑いながらよしのを見上げた。
せんゆ「クゥーン……」
よしのはぺたりとその場にへたり込んだ。狛犬は慰めるようによしのの頬を舐めた。フィードは眉を寄せ、言葉を探しているようだった。そして、絞り出すように言った。
フィード「無理も無ェ……こんな数の死体」
フィードの足元で、クリスは尻尾を器用に使って背中をボリボリと掻いた。
クリス「珍しいな」
フィード「うっせー、俺様も初めて見たんだよ」
クリス「"おびただしい数の死体"ねぇ……まァ、お前らの柵に囲われた平和なんて一歩外に出れば単なるマヤカシだってことを、知るべきだな」

クリスはゆっくりとよしのに歩み寄った。
クリス「神使教ではどのように考えるか教えてあげよっか」
よしのは涙に濡れた漆黒の瞳で、狛犬を押し退け自分の膝の上に乗る黒猫を見つめた。
クリス「こいつらが何で動かないか、それは魂は天使のエサになり、体は土に還るのを待っているから。魂を食べた天使は新しい命に宿り、土に還った体は大地の糧となる、ここにあるすべては次の命に繋がるためなんだよ」
よしのは再び目の前に広がる惨状を見渡した。

フィード「だーから神使教は夢見がちだって言われてんだよ」

クリス「水差すなアホ」
フィードはよしのの目の前にしゃがみこんでクリスの尻尾を掴みポイと投げ捨てるとジロリとよしのの泣き顔を見つめた。
フィード「てめぇは何で泣いてやがんだよ」
よしのは何度かしゃっくりを上げてしばらく落ち着くのを待ってから口を開いた。
よしの「悲しかったからです」
フィード「なんで悲しいんだよ」
よしのは涙を拭った。
よしの「ここにいる方々にはご家族がいて、お友達がいて、それぞれの人生があって、それをこんな形で奪われて……」
フィードはよしのを指差した。
フィード「あくまで魔法圏の意見だが」
クリスが投げられた先から駆け戻ってきた。
クリス「やめとけアホタレ」
フィードはクリスの耳をふん掴み、再び遠くへ投げ捨てた。
フィードは立ち上がり、よしのを見下ろした。
フィード「お前のそういう気持ちを、神使教のやつらはああいう考えで誤魔化してんだよ! 悲しいもんは悲しいんだ! どうしようもねぇじゃねぇかよ!」
よしのはきょとんとフィードを見つめた。それはいつもであれば"言いそうにない"ような言葉であったためだった。
フィードは頬を掻いた。
フィード「だからその、なんだ、」
よしの(……慰めてくださっている?)
フィード「あーっもーっ! エオルのヤローがいねぇせいだ!」
フィードは頭をかきむしった。クリスはフィードの足元で呆れたようにため息をついた。
クリス「お前、いつもあのエルフのフォロー期待して好き勝手やってっからいざというときにちゃんと出来な、」
クリスは再び首根っこを掴まれ遠くに放り投げられた。
フィード「おら」
差し伸べられた白い手を掴むと、そのまま引き寄せられ、よしのは立ち上がった。
フィード「"感じること"は"学び"だ、俺様も今この光景を見て思ったことは忘れねぇ」
よしのは再び辺りの惨状を目に焼き付け、口を固く結び、深く頷いた。
その様子を見、クリスはため息をついた。
クリス(魔法圏の思想なんか植え付けて、よしのちゃんが神使教に戻った時に思想犯だと後ろ指さされたらどうするつもりだ、あのバカ)
クリスはよしのを見つめた。
――まあ、"戻る時"なんざ二度と来ねぇだろうがな

その瞳にはよしのではなく、よしのの周囲に浮かぶ宝珠たちが映っていた。



        



再びよしのを背負い、フィードは山を駆け登った。道しるべのように点々と目に入る遺体を通りすぎる度に、よしのは固く目を閉じ、手を合わせた。
そうしてたどり着いた煙の出所。フィードの背中から降り、よしのはその場にヘナヘナとへたり込んだ。



◆◆◆
坑道に立ち込める"煤臭さ"に耐え兼ね、エオルとエリスはたまたま発見した梯子を昇り鉄の蓋を開け、地上に出た。
エリス「鼻ん中まで真っ黒だよ!」
エオル「これは……」
二人が"鉄の蓋"から頭を出した、その目の前に広がったのは、強烈な焦げ臭さと真っ黒に跡形もなく崩れ落ちた木造建造物の跡。
エリスは言葉を失っているようだった。ただただポカンと口を開けたまま辺りを何度も見渡していた。
「エオル」
後ろを振り向くと、10メートルほど先に、しゃがみこんでただただ手を合わせているよしのと、眉間に皺を寄せ、いつになく神妙な面持ちのフィード。フィードは「あれを見ろ」と顎でジェスチャーした。顎で指し示された先に目をやると、"影がない"ため全く気づかなかったが、まるでムカデのように無数の人間の手足が並び、焦げた辺りを必死に何か探しているように、鼻や目のない平らな顔を地面に近づけ"嗅ぎ回っている"、数メートルはある不可思議な生物。その背中には四対の真っ白な羽。
エオル(う……気持ち悪い)
エリス「天使かい……!?」
エリスはその"肌色"のムカデに駆け寄った。
エリス「妹は! まさかあたしの妹まで喰っちゃいないだろうね!」
エリスの言葉など、全く気に留める様子もなく、"肌色のムカデ"は高級キノコ探しの豚のように地面を嗅ぎ回り続けていた。
ふと、目に留まった"ムカデの足"の部分には、見覚えのある腕がついていた。
エリス「この、あざ……」
触れようと伸ばした指先は震えていた。触れるのを止め、両手を腰に当て、俯き、深く長いため息をついた。
エオル「エリスさん……」
"ムカデ"は白い羽を羽ばたかせ、空の彼方へと消えていった。
エリス「誰がこんなこと……」
この真っ黒に焦げきった瓦礫の中からは、人間の形すら見つけ出すのは困難だった。エオルはただエリスの肩を擦った。

よしの「フィード様……」
フィード「あん?」
組んだ手を固く握り、よしのはまっすぐとエリスを見つめた。
よしの「無理を承知でお願いです、私、お墓を立てて差し上げたいです」
フィード「じゃあ無茶言うな」
よしの「無茶も承知です、お願いします」
フィードはガクンと項垂れた。
よしのはその場で両手を使い、土を掻き分け始めた。だがその地面は固く、少しも掘り進めることができない。
フィード「あーもー、しょうがねぇな」
「下がってな」とよしのを立たせるとフィードは地面に向かい、手をかざした。
クリスは欠伸した。
フィード「小爆炎グラン・デ!」
翳した手からは何も起こることなく、フィードの声だけがただ響いた。
フィード「あん?」
足元の砂を片足で軽くよけると、そこにはくすんだ白い塗料で描かれた見覚えのある印があった。フィードは顔をしかめた。
フィード「また魔法封じかよ」
クリス「"鉄の蓋"にあれだけの細工があったんだ、当然ここも何かしら細工してんだろ」
フィード「うっせー、ブサネコ」



エリス「犯人は!」
エリスの低い声がこだました。
エリス「一体誰がこんなこと!」
瓦礫の中を掻き分け、少しでも手がかりを探そうとするエリスの肩を、エオルは引き留めた。
エオル「危ないですから!」
肩にかかるエオルの手をエリスはイライラしながら振り払った。
エリス「ふん、魔導師の仕業じゃなけりゃ関係ないってか!」
エオル「そうじゃありません! いつ残った柱とかが崩れてもおかしくない! 危ないんですよ!」
エリス「離せよ! 手がかりを見つけるんだ! アタシは復讐するんだ!」
"復讐"。エオルは初めて人の口から聞くその単語に背筋が凍り付いた。
エオル「と、とにかく落ち着いてください」
エリス「外野はすっこんでな!」

フィード「なんだこりゃ?」

フィードが見つめているのは崩れかけた外壁。
エリス「なんだい」
エリスとエオルは瓦礫の中を掻き分けながらフィードの視線の先へ向かった。そうしてたどり着いたその外壁を見、エリスは葉巻を取り出すと、ニヤリと笑った。
エリス「なんだ、魔導師じゃなけりゃあ、僧侶かい」
エオル「え……?」

エリスの皺だらけのたるんだ瞼から覗く鋭い瞳に映るのは、色とりどりの塗料で、まるで町の不良たちの壁の落書きのように描かれた文字。

――『B-MOON』――

エリス「"黒い三日月"、魔薬業界じゃあ知らないやつはいない」
エオル「なんなんですか、その"黒い三日月"って」
フィード「パンゲア大陸の魔薬業界、南半分をほぼ牛耳ってるって話だな」
葉巻をふかし、エリスはニヤリと笑った。
エリス「よく知ってんじゃないか」
エオル(寧ろフィードあなたは何で知ってるんでしたっけーー?!)
よしの「"僧侶"というのは……?」
エリス「リーダーが桃花源の神使教の元・坊さんだって話だ」
エオルは呆れたようにため息をついた。
エオル「破戒僧ってやつですか」
エリスは勢いよく手を叩いた。
エリス「そうと決まれば、行くよ!」

わずかの沈黙

エオルは眉を寄せて聞き返した。
エオル「はい?」
エリスは何言ってんだ、と顔をしかめた。
エリス「黒い三日月の所だよ! 復讐に行くんだ」
エオル(ええと、どこから突っ込めばいいんだ?)
言葉につまるエオルの様子に、エリスはイライラしているようだった。
エリス「なんだい、か弱い女見捨ててオサラバかい、魔導師のくせに人でなしだねぇ」
エオル「……いえ、その、そうではなく……」
エリスは唐突に声を荒げた。
エリス「こっちは唯一の肉親殺られてんだよ!」
少し困ったように頭を掻き、エオルは口を開いた。
エオル「魔導師として、品行方正である義務があります、他人の復讐に加担するわけにはいきません」
クリス「よく言うぜ」
エオル「うるさいタヌキ」

フィード「まあその婆さんの言うことも一理ある」

一同がフィードに注目した。
その顔には悪巧みの笑みが浮かべられていた。
エオル(嫌な予感……)
フィード「まあ、南半分牛耳ってんだ、そいつに傘下探させりゃ俺様たちはしらみ潰しによしのの宝珠を探さなくてもいい」
ポカンとフィードの話を聞いていたエオルはふと我に返った。
エオル「……"そいつに探させる"……ってどういうことでしょうか社長さん?」
フィードは"何で聞き返すんだ"と眉を潜め、平然と答えた。
フィード「そのまんまだよ、抵抗すんなら力づくでやらせる」
エリスは葉巻をふかしながら苦虫を潰したように顔をしかめた。
エリス「一理あるっつったじゃないか、それじゃ"黒い三日月"を潰したいってアタシの目的とは相反するよ」
フィード「一理あるっつったのは、ババァ一人置いてくのはおかわいそうだってとこだけだ、そっから先は別の話だ、おら、わかったらとっととその黒のなんたらに案内しやがれ」
エリスは呆れたようにため息をついた。
エリス「結局案内ソレが目的かい、まあ良いさ、エルフのアンチャンが言うのもごもっともだ」
エリスはフィードに右手を差し出した。
エリス「黒い三日月まではお互い協力関係だ、よろしくな」
フィードはパシンと勢いよくエリスの手を握った。
フィード「俺様の足引っ張んじゃねぇぞ、エオルのは別にいいけど」
エオル「おーい」

よしの「フィードさま……」

おずおずと焼け跡を見たりフィードをみたりと、よしのは落ち着きがなかった。
フィードはガクリと肩を落とした。
フィード「そうだった」
エオル「何?」

よしの「埋葬をしたいと……」

エリスは白い煙を吐きながらむせ込んだ。
エリス「何言ってんだい、あれだけの数なんだよ」
よしのは躊躇うことなく頷いた。
エリス「バカ言うんじゃないよ、日が暮れちまう! そりゃああの炭の中にはアタシの妹が埋まってるだろうけどさ、夜になって魔物にでも襲われたら、元も子もないだろ!」
よしの「その時は私がお守りします!」
エリス「何言ってんだい、魔法が使えない上にこの固い土、現実見な、クソガキ」
よしのは言葉に詰まった。
エオル(うーん、エリスさんの言うことはもっともだな……)
フィードは腕捲りした。
フィード「ようし! こうなりゃ悪魔合体イクセスブレイクで、」
バチンと、クリスのモチモチとした尻尾がフィードの頬に炸裂した。
フィード「いってぇな!」
クリス「エリスちゃんがびっくりしちゃうだろうがカス! こんなときはよしのちゃん、土をちょっと耕せばいいんだよ」
よしのはきょとんとクリスを見つめた。
フィード「ハァ? 何言っ」
クリス「うるせえ」
再びクリスの尻尾がフィードに炸裂した。
フィード「いてぇよバカ!」
クリス「茶色の宝珠を使うんだ」
よしのはふたたびきょとんとした。
フィード「茶色のって、てめえの口からでてきたアレ(※)かよ」 ※第6話
クリス「土宝珠"チュウリュウ"、土を操り全てを"飲み込む"」
エオル「飲み込む?」
エリス「……ん!? タヌキがしゃべった!?」
クリスの円らな瞳がエリスを捉えた。
クリス「ところでエリスちゃん、埋葬でいいんだよね?」
葉巻からポロリと灰が落ちた。
エリス「あ、ああ、それでいいよ」
クリスはよしのを見つめ、かわいく尻尾を振った。
クリス「ヤサカニを発動させて、名前を喚んでみて」
よしのは何度も短く頷くと、ヤサカニを発動させた。よしのの周囲に円形に並ぶ5つの宝珠。よしのは恐る恐る口を開いた。
よしの「ちゅ、ちゅうりゅう……?」
すると、宝珠の円はくるくると回り、よしのの正面に茶色の宝珠が現れた。宝珠の中には"土"という文字が埋め込まれている。
宝珠はまばゆい光を放ち始めた。同時に地鳴りが始まった。
よしの「あわわわわ」
エリスはエオルにしがみついた。
エオル「何だ!?」

ズズズ……

突然一面の土がまるで卵と小麦粉を混ぜるようにぐるぐると回り始めた。岩のように固かったはずの地面に、みるみる足が埋まっていく。
エオル「うわわわ!」
エリス「ひいっ」
フィード「よしのバカ止めろ!」
よしのは慌ててヤサカニをしまい込んだ。宝珠たちはゆらりと空間を歪め、消えていった。
一行はくるぶしまで地面に埋まっていた。フィードは埋まった足を蹴りあげた。土はポロポロと空気に舞った。
フィード「……たしかに耕されたな」
エリス「一体なんだったの?」
よしのは呆然と辺りを見回していた。そしてクリスに視線を向けた。
クリス「あとはヤローども、出番だぞ」
フィード「なにぃーっ」
エリスは目元を抑え、声を絞り出すように言った。
エリス「スコップなら地下道にあるよ……妹を弔えるなら、弔いたい……」
エオル「……やりましょうか」
よしのはふと我に返った。
よしの「わ、私も!」



        



ひとつひとつ、墓標を作り、そのひとつひとつに手を合わせるよしのの横顔を、クリスは木の枝の上に丸まり遠巻きに見つめていた。
泥だらけでスコップを担いだフィードがその木に寄りかかった。
フィード「てめぇも手伝え」
クリス「やなこった」
フィードは手についた土を指で擦りながら口を開いた。
フィード「前回の黒トカゲ(※)といい、なぜ手を貸す?」 ※第13話
クリス「ヤサカニを再び集めている理由は知らない、だが、戦力としては必要だ……どっかのデグ魔導師よりな」
フィード「んだとこら」

遠くからエオルの大声が聞こえた。
エオル「フィード! サボるな!」
エオルに呼ばれ舌打ちをしながら向かうその背中を見つめ、クリスは独り言のように呟いた。
クリス「……"カーニバル"を阻止するためにはな」



        
        
        
KT … カイセツ(K)とツッコミ(T)
      またの名を
      カユイ(K)ところにテ(T)がとどく


      
       
p.3    ■やめとけババァの口から魂飛び出んぞ
    ボウイサナをみたらびっくりするだろ、という意味です。
       

p.4    ■楽しようとあのカニに乗ったはいいが
    ……どうやって?(笑)

       
p.5    ■海沿いの村の連中が、この山のやつと荷物の運搬の取引してる
    荷物とは魔薬のことです。
       

p.6    ■円形の鉄の蓋
    =マンホール。


p.8    ■登山となると途端にはぐれる
    過去二回、登山でよしのはフィード&エオルとはぐれている。
    (雪山の回とハイジと共闘した回)


p.10   ■ヤサカニを再び集めている
    大昔に戦争で使われていた → 今はバラバラで、そのパーツをよしのは集めている = "再び集めている"
       
       
       2011.9.2
        KurimCoroque(栗ムコロッケ)